同僚や部下に業務を依頼して間違った業務を行われた、取引先に伝えたつもりが認識に齟齬があった、このような経験はありませんか?
このような齟齬はビジネス進行上支障をきたします。
相手のせいにするのは簡単ですが、それでは問題は解決しません。
また、相手を変化させることは自分が変化するよりも困難であり、取引先の担当者を変化させるのは現実的には不可能に近いです。
伝えた相手のせいにするのではなく、まずは自分の伝え方を見直してみませんか。
似て非なる「伝えた」と「伝わった」
「伝えた」と「伝わった」の違いは何でしょう?
いくつか違いはあると思いますが、ここでは主語に着目したいと思います。
主語の違いを意識して、自分本位な考え方を改める
「伝えた」は主語が自分になっていて、「伝わった」は主語が相手になっています。
つまり、「伝えた」はあなたの行動を表しているのであって、相手に「伝わった」かどうかはわかりません。
「伝える」ということは、相手に何かしらのお仕事であったり、助けであったり行動を依頼することが目的です。
まずは「伝えた」と「伝わった」の違いを認識して、伝わるための伝え方を学んでいきましょう。
人は興味あることは聞くが、話の80%程度は聞いてないことを意識する
人は無意識のうちに話の内容を取捨選択しています。
具体的には興味関心があることは聞いていますが、興味関心がないものは音や言葉としては認識しているが、意味や目的といった深い考察は行わず聞き流しています。
なので、部下に何かを教える、顧客にサービスを説明するといった時は、相手が興味を持って聞く姿勢になる工夫が重要になります。
わかりにくい話し方の特徴
以下はトラム社内で話し合った際に出てきたわかりにくい話し方の特徴です。
このような話し方をしないように心がけましょう。
- 結論を言わずに状況説明に終始している(=言い訳をしているように聞こえる)
- 話の順番が前後する
- 抑揚なく一定のテンポで話す
- 情報が多すぎる
- 専門用語が多い
- 自分が知っていることは相手も知っていると思い込んで話す
- などなど・・・
伝えるために重要なこと「相手の視点に立つ」
相手の視点に立つことによるメリット
- 理解促進
相手の視点に立つことで、相手の状況や感情を理解しやすくなります。これにより、より深いコミュニケーションが可能になります。 - 信頼構築
相手の視点を尊重する姿勢は、信頼を築く重要な要素です。相手が自分を理解してくれていると感じると、コミュニケーションが円滑になり、信頼が深まります。 - 誤解防止
自分の意図や立場だけでなく、相手の意図や立場も考慮することで、誤解を防ぐことができます。誤解が少ないコミュニケーションは、問題解決や協力にも役立ちます。 - 共感
相手の視点に立つことで、その人の感情や経験に共感する機会が増えます。共感は人間関係を深め、感情の理解を助けます。 - 対話品質向上
相手の視点に立つことで、対話がより豊かになります。異なる視点や意見を尊重し、対話を深めることで、新しいアイデアや解決策が生まれる可能性が高まります。
以下でしょうか?
これらのように相手視点で話すということは、相手に対して礼儀を持って接することにもなり、結果信頼され、物事を円滑に進めやすくなります。
わかりやすい話し方
一文を短くする
一つのセンテンス(話の区切り)に複数のことを盛り込むとややこしくなります。
そのため、一つのセンテンスでは一つの話を伝えることのほうがわかりやすくなります。
以下の例文を見てみましょう。
<長い例文>
先日調査を依頼されていました競合分析について、私の方で調査を行ったところ、A社には コンテンツが充実しているという利点があることが判明しました。また、コピーからデザインまですべて優れているというメリットもありました。ちなみにSEO対策も十分効果を発揮している様です。
<短い例文>
競合分析についての報告です。A社に優位点は3点ありました。一つはコンテンツが充実していること。二つ目はコピーが優れていること。三つ目はSEO力も高いことです。
いかがでしょうか。
一文を短くすることで伝えたいことがよりクリアになり、相手に伝わりやすくなります。
具体的な表現にする
人は自分が知っている情報と照らし合わせてイメージすることで、より明確に理解することができます。
以下の曖昧な表現と具体的な表現を比較してみましょう。
<曖昧な表現>
B社のサイトは表示速度がとにかく早くてびっくりします。
B社のサイトはUIが使いやすくて感動しました。
<具体的な表現>
B社のサイトは0.1秒で表示され、ストレスを感じることなく閲覧できました。
B社のサイトはマウスオーバーするだけでメニューが表示され、メニュー横に内容を表すアイコンもされており内容が早期しやすく、迷うことなく利用でき感動しました。
いかがでしょうか?
定量化された説明や、具体的な内容が表現されることで、話す相手に共感を促すことができたと思います。
主語と述語を明確にする
主語を明確にする
よく主語がないまま説明する方を見受けます。
主語がないまま話をされると、勘違いや認識の齟齬を生みやすくなります。
以下の例文を見てみましょう。
<例文>
先日C社に対してデザイン確認打ち合わせに社長がいらっしゃってました。「赤をテーマカラーにしたい」という要望だったので、赤を基調としたデザイン案を提示しましたが、社長は赤はあまり好きでないのか、難しい表情をされて言葉も少なかったです。
いかがでしょうか?
ぱっと見「赤をテーマカラーにしたい」と要望されたのは社長のようにみられますが、その後の説明で「赤をテーマカラーにしたい」と要望されたのは社長ではないことが読み取れます。
この報告を受けた方は誰が「赤をテーマカラーにしたい」と要望したのか混乱してしまいます。
述語を明確にする
述語が主語と合致していない場合、やはり伝わりにくくなります。
以下の例文を見てみましょう。
<例文>
先日依頼したDさんは、コーディングから懸賞までAIを活用されており、バグが出ることや、バグが残ったまま納品されてしまうことを防ぐための万全の措置が取られており、さすが口コミ評価No.1だと感動しました。
上記の例文では主語は「Dさん」ですが、術後は「感動しました」で対応していません。
対面での話し合いだと違和感を感じにくいですが、文章だとわかりにくいので、短く切るほうが良いでしょう。
また、以下の例文の印象の違いはいかがでしょうか。
<例文>
- このサイトは、UIがわかりにくく使いづらいが、かっこいいサイトとしてアクセスがある。
- このサイトは、かっこいいサイトとしてアクセスがあるが、UIがわかりにくく使いづらい。
上の例文はサイトにかかる装飾語が「UIがわかりにくく使いづらい」で、述語が「かっこいいサイトとしてアクセスがある」になっています。
下の例文は上の例文の装飾語と述語を入れ替えたのみですが、「このサイト」に対する印象が変わりませんか?
このように装飾語・述語の扱いによって、聞き手に与える印象を変えることができます。
接続詞の使い方に気を付ける
伝わりやすくする接続詞の種類
なぜなら=理由を伝える
例えば=具体例を伝える
つまり=要約して理解を促す
伝わりにくくなる接続詞
そして=時系列が続く
また=話が変わる
「話を並列で繋がない」ことでわかりやすくなる
一つの話では一つのメッセージ、一つのセクションでは一つのテーマを伝えるように心がけましょう。
カタカナ語や専門用語はできるだけ避ける
カタカナ用語
<カタカナ語を多用したわかりにくい例文>
「クライアントとのミーティングで、オプションをディスカッション。リーダーシップとシンクタンクをマージし、ウェビナーやフェーズ別アプローチでアライアンス構築。」
<わかりやすく(?)修正した例文>
「クライアントとのミーティングで、選択肢を話し合いました。リーダーシップと専門家集団を統合し、ウェビナーと段階的なアプローチで提携関係を築きました。」
いかがでしょう?
ちょっと極端ですがわかりにくさはご理解いただけたかと思います。
専門用語
<マーケティング専門用語を多用したわかりにくい例文>
「戦略的なターゲティングを行い、リードジェネレーションのためのインバウンドおよびアウトバウンドキャンペーンを展開。コンテンツマーケティングを推進し、SEOとSEMを最適化。リードスコアリングを実施し、リードナーチャリングのプロセスを改善。」
<わかりやすく(?)修正した例文>
「戦略的な顧客ターゲットを設定し、新しい見込み顧客を獲得するためのインバウンドおよびアウトバウンドキャンペーンを行いました。コンテンツマーケティングを強化し、検索エンジン最適化(SEO)と検索エンジンマーケティング(SEM)を最適化しました。リードスコアリングを実施し、見込み顧客の育成プロセスを改善しました。」
専門用語も同様にわかりにくさを感じていただけたと思います。
使い分ける基準
使い分ける基準は相手が誰か?によります。
業界のエキスパート同士であれば、言葉の定義や意味に齟齬が少ないので、専門用語を多用したほうがスムーズな会話になる可能性があります。
相手がリテラシーの低いクライアントであれば、専門用語は避けるか、説明をしながら話すなどをし、伝わりやすさを心がけることが重要です。
つまり「相手の視点に立つこと」が重要になります。
論理的な話し方
テレビやYoutubeを見ていて「この人の話はわかりやすいなぁ〜」という人がいらっしゃいますね。
そういった人は論理的な話し方ができています。
論理的な話し方ができていると以下のようなメリットを得られます。
<メリット>
- 伝えたいことが伝わる
- 相手に納得してもらえる(説得ではなくなる)
- 了承や合意を得られやすくなる
- 説明が上手な人として信頼感を得られる
論理的な話し方の基本|結論から話す
高い生産性が求められるビジネスシーンにおいて、論理的に話す力は必須のスキルです。
伝わることを意識するあまり冗長に話してしまっていては、次回から商談の機会を失うリスクもあります。
短い時間でしっかり伝わるためには最も大事なことである「結論」から話すことを心がけましょう。
そのためには5W1H「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰と(Who)」「何をするのか(What)」「なぜするのか(Why)」「どのようにするのか(How)」を整理してから話すと、より正確に伝わるしょう。
以下の例文を見てみましょう。
<論理的でない例文>
F社のWEBサイト制作についてご相談なのですが、先日社内で進捗確認ミーティングを行った際、デザイナーからお客様から写真素材が届いていないので、まだTOPページのデザインが完成していないと報告がありました。また、エンジニアからも顧客から共有されたサーバ構成を確認したところPHPのバージョンが古く、最新のWordPressが動かないとも報告されました。バージョンアップ作業は少なくとも1週間必要だとのことでした。これからお客様に連絡して写真素材の支給とサーバのPHPバージョンアップについて相談するのですが、当初想定した納品期日に間に合わせるのが難しいと感じてまして、次回のお客様との打ち合わせに同席してもらえないでしょうか?
<論理的な例文>
F社の次回打ち合わせに同席をお願いできますでしょうか。
理由はお客様都合で納期に間に合わせるのが難しく、調整が必要なためです。
納期に間に合わない理由は大きく以下2つです。
・お客様支給の写真素材提供が滞っており、TOPページデザインが未だ完成していない
・お客様支給のサーバに利用されているPHPバージョンが古く、バージョンアップ作業に5営業日必要なため
自分の進行管理にも問題があった反省しておりその点もお詫びする予定です。
ご同席お願いできないでしょうか?
いかがでしょうか?
論理的な例文は結論>理由>根拠の順で説明され、内容理解が容易にできると思います。
(同席したかは別として・・・)
理由と根拠
理由や根拠を説明する際のポイントは以下のとおりです。
- ここからは理由である、ということを明確にする(例|理由は〜)
- 物事の説明おいて具体例を3つ挙げると説得力が増し、4つ以上だと覚えられるに説得力が低下する
- 理由や根拠は可能な限り定量的(数字やデータ)に説明する
理由や根拠を説明する際は上記の3つのポイントを意識して行いましょう。
論理的な説明・話し方に役立つ「ピラミッドストラクチャー」
論理的な説明・話し方に役立つフレームワークとして「ピラミッドストラクチャー」と呼ばれるものがあります。
先ほどの<論理的な例文>を用いてみましょう。
目的が上部にあり、それを実行するための理由が下段に並列で並んでいます。
このように目的を最上段に配置して理由や根拠を下段に配置すると、論理的な構造になっているか?確認がしやすくなります。
また、ピラミッドストラクチャーは1段でなく何段に落とし込んで利用することができます。
思考を整理する際などに便利です。
ピラミッドストラクチャーを使った論理的な情報整理の流れ
1. 主張を決める
相手に伝える主張を決めます。
この際、相手の視点に立って考え、言語化すると伝わりやすくなるでしょう。
2. 伝えたいことや、主張に対する理由を洗い出し3つにまとめる
主張に対する理由は、主張を支える内容であることが重要です。
主張との関係性が希薄であったり、相手に対して関連性が薄いと自己都合として受け入れにくいものに捉えられてしまいます。
3. 理由の正当性を高める根拠を集める
根拠は理由を支える具体的な事象・事例・データであることが望ましいです。
この事象・事例・データが具体的であると、より納得感が高まります。
「理由と根拠」でも説明したとおり、定量的(数字やデータ)であることが望ましいです。
3C分析にも利用できるピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーは3C分析(顧客・市場、自社、競合分析)にも有効です。
具体的には以下のような図になります。
以下に新規サービスを検討する際の利用例を掲載します。
いかがでしょうか?
利用イメージをつかめていただけますと幸いです。
まとめ
最後に伝わる話し方のポイントをまとめます。
- 伝えたと伝わるは違うことを意識する
- 相手の視点に立って考える
- 一文を短くする
- 具体的な表現をする
- 主語と述語を明確にする
- 接続詞の使い方に気をつける
- カタカナ用語と専門用語は相手によって使い分ける
- 結論→理由・根拠の流れで話す
- ピラミッドストラクチャーを使って整理する
上記を意識して伝わる話し方を習得しましょう!