アウターブランディングとインナーブランディング
ブランドは顧客との関係を築き、企業の独自性や価値を示す重要な要素です。
アウターブランディングとインナーブランディングは、それぞれ外部と内部へのブランドメッセージの伝達に焦点を当てた概念です。
これらを両軸で行いブランドの一貫性を確保することで、ブランデイングは進んでいきます。
アウターブランディングとは
アウターブランディングは、企業が顧客や市場に向けて発信するブランドの外部的側面を指します。
これには、ロゴ、スローガン、広告、ウェブサイト、パッケージデザインなど生活者が触れるすべてのタッチポイントが含まれます。
アウターブランディングは、ブランドのアイデンティティや価値を視覚的かつ感情的に表現し、生活者に強い印象つまりその企業や商品・サービスの強みを伝える役割を果たします。
インナーブランディングとは
一方、インナーブランディングは従業員や組織のメンバーに向けてブランドの価値観や使命を浸透させる内部的側面を指します。
インナーブランディングは、企業のブランドメッセージや価値観を従業員に浸透させるプロセスであり、従業員がブランドに共感し理解しそれを業務に反映させることは、企業文化の構築や組織のコミュニケーションを強化し外部顧客への一貫性あるブランド体験を提供するための基盤を築く重要な要素です。
インナーブランディングを成功させることで、従業員はブランドの使命や価値観に共感するだけでなく、そのブランドを自分の仕事や日常生活に結びつけることができます。これにより、従業員は単なる業務を行うだけでなくブランドの体現者になり、顧客との接点でブランドの価値をより効果的に伝えることが可能となります。
従業員アンケート
従業員アンケートは、インナーブランディングの成功に向けて重要な役割を果たすツールの一つです。
アンケートを通じて従業員の声を聞き、彼らのブランドへの理解や共感度など、ブランドついてどのように感じているかを把握することができます。
従業員アンケートの設計には慎重な工夫が必要であり、従業員の意見や価値観を正確に反映する質問を構築することが重要です。
そして従業員アンケートの結果を分析することで、ブランドの強みや課題、従業員のニーズや期待が明らかになります。これに基づいて、適切な改善策や実践のアプローチを見つけることが目的です。
従業員アンケートは、組織と従業員とのコミュニケーションを強化し、ブランドの社内浸透と実践の成功に貢献する重要な手段となります。
このように従業員アンケートは、従業員の声を収集しブランドの社内浸透と実践の向上を支援する重要なツールです。それでは以下に簡単ではありますが、アンケート作成のステップを書いてみます。
アンケート目的の明確化
従業員アンケートを始めるにあたって、まず最初に明確な目的を定義することが重要です。
例えば、従業員のブランド理解度の評価、エンゲージメントの測定、改善すべき点の特定などが目的となるでしょう。目的を明確にすることで、アンケートのフォーカスを絞り、解像度の高い情報を得ることができます。
質問項目の作成
従業員アンケートの目的に基づいて適切な質問項目を作成します。
オープンな質問や選択肢を組み合わせ、従業員の意見や感想を網羅的に収集します。
質問項目の数や形式は、アンケートの長さや参加の意欲に影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。自由入力欄ばかりでは、回答への負担があがってしまうのでチェックボックスやラジオボタンなどで補うといいでしょう。
トラムでは以下のような質問を用意しました
- トラムと聞いて最初に思い浮かぶものは何ですか?【自由入力欄】
- トラムが大事にすべき(伸ばすべき)イメージ(評価)は何でしょうか【セレクトボックス】
- あなたが感じているトラムが抱えている課題【セレクトボックス】
- あなたの現在強みを教えてください【セレクトボックス】
- あなたが将来得たい強みを教えてください【セレクトボックス】
- その他伝えたいこと【自由入力欄】
- トラムの満足度を教えてください【NPS】
アンケートの配信方法
従業員アンケートをどのような方法で案内するかも重要です。
紙媒体…も考えられますが後の集計と分析に時間がかかってしまうので可能であればオンラインフォームやアンケートツール、メールなどを活用して、従業員がアンケートに参加しやすい環境を整えます。
トラムではGoogle Formを用いて作成・配信しました!
Google Formだと自動的に集計結果をグラフにしてくれますし、回答内容はスプレッドシートにまとめられるのでおすすめです。
従業員への呼びかけ
従業員アンケートの参加を従業員に呼びかけるコミュニケーションが重要です。
目的や重要性を伝え参加の意欲を高めるために、組織のリーダーシップや管理層の支援を取り入れることも考えましょう。
アンケート期間の設定
アンケートの回答期間を適切に設定します。
日常の業務があるので、従業員が十分な時間を確保し参加できるように配慮します。
長すぎず短すぎず適切なバランスを保つことが重要です。
データの整理と分析
アンケートが終了したら、回答データを整理して分析します。
質問ごとの回答傾向やパターンを把握し、優先順位を付ける際の基礎データとします。
NPS(Net Promoter Score)とは
NPS(Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)という言葉を知っている方もいらっしゃるかと思います。
NPSは、顧客の満足度や共感度を測定するための指標であり、企業や組織が顧客の声を把握し改善策を導き出す際に有用なツールとして広く活用されています。
この指標はフレドリック・F・ライクヘルトによって提唱され、シンプルかつ効果的なアプローチで顧客の評価を示すことを可能にしました。
NPSと従業員エンゲージメントの関連
NPSは顧客エンゲージメントを測定するためのツールとして広く知られていますが、同様に従業員エンゲージメントにも用いられます。組織の成功においては、従業員の満足度と共感度も重要な役割を果たします。
従業員が組織に強い感情的なつながりを持ち、自分の仕事に対して熱心に取り組む姿勢を示すことは、生産性の向上やサービス品質の向上に繋がります。
NPSの計測方法
NPSは、「この商品(サービス・企業)を友人や同僚にどのくらい推薦しますか?」の質問に対する回答をもとに、参加者を3つのカテゴリに分類します。
回答者は、「プロモーター(Promoters)」「パッシブ(Passives)」「デトラクター(Detractors)」に分けられます。
プロモーターは高評価を示す回答者、パッシブは中立的な評価を示す回答者、デトラクターは低評価を示す回答者です。
NPSの計算は、プロモーターの割合からデトラクターの割合を引いたものです。具体的な計算式は以下の通りです。
NPSの解釈
NPSは、低評価者しかいないことを示す-100から、高評価者しかいないことを示す+100の範囲で表現され、数値が高いほど顧客や従業員の満足度が高いことを示します。
NPSの解釈は次のようになります。
高いNPSスコア(NPSが+50以上)
NPSが+50以上の場合、組織の顧客や従業員は非常に満足しており積極的に組織を支持し他者に推薦する可能性が高いです。
高いNPSスコアはブランドの強さや顧客ロイヤルティの高さを示します。
中程度のNPSスコア(NPSが+30から+49)
NPSが+30から+49の場合、顧客や従業員は満足していますが改善の余地があるとされています。
組織はパッシブ(中立的な回答者)な顧客や従業員をプロモーター(高評価を示す回答者)に変えるための施策を検討します。
低いNPSスコア(NPSが+0から+29)
NPSが+0から+29の場合、顧客や従業員の満足度は中立的であり改善が必要なポイントが複数存在します。
デトラクター(低評価を示す回答者)を減少させるために具体的な対策が求められます。
低いNPSスコア(NPSが-100から-1)
NPSが-100から-1の場合、顧客や従業員の満足度は低く組織にとって深刻な課題を示しています。
組織は根本的な改善が必要であり、徹底した改革が求められます。
NPSと従業員エンゲージメントの関連
NPSは従業員エンゲージメントとの関連性も大きく、高いNPSスコアは従業員エンゲージメントの向上を示唆します。プロモーター(高評価を示す回答者)として評価される従業員は、組織への愛着や誇りを持ち、組織の目標に共感する傾向があります。
一方でデトラクター(低評価を示す回答者)は、不満や不安を抱え、エンゲージメントが低い可能性が高いです。
従業員エンゲージメントを向上させるためには、NPSの結果を分析し、デトラクターの意見や要望に真摯に向き合い、改善策を実行することが重要です。また、プロモーターの声を活用して組織全体の魅力を高め、従業員の満足度やエンゲージメントを向上させる取り組みも求められます。
トラムではNPSは 0 でした!
わたし達は0であることを決してネガティブに捉えていません。
企業体としての伸びしろを感じ、現在行っているリブランデイングプロジェクトにおいて少しづつではありますが改善していこうと考えています。
まとめ
組織内での価値観による仕事意識の違いは、個々の信念や優先順位に基づいて形成されます。
これに加えて、経験や価値観、さらには世代の違いも、従業員の仕事への姿勢に大きな影響を及ぼす要素です。
一人は自己成長を重視し、刺激的なプロジェクトに没頭することで達成感を感じるかもしれません。一方で別の人は、安定感を求め、定型業務を通じて組織に貢献することに価値を見出すかもしれません。こうした違いは、チーム内での役割分担や目標設定に影響を与えます。
こうした多様性をプラスにしていくには、組織内でのコミュニケーションや協働において共感のポイントを見つけることが不可欠です。価値観や経験の違いにもかかわらず、共通する目標や価値を共有することで壁を乗り越えることができチームの連帯感を高め、協力関係を強化する一助となります。
また、従業員の満足度も多様な要因によって影響を受けます。
価値観や経験の違いによって、従業員の仕事への評価基準や満足度のポイントは異なる場合があります。組織は従業員の多様性を尊重し、個々のニーズに合わせた働き方やキャリアパスを提供することで、従業員の満足度向上を図らなければなりません。
そして従業員の本音を引き出すことも重要です。価値観や経験に基づく異なる意見や提案は、新たなアイディアや改善策として活かされます。オープンなコミュニケーション環境を整え、従業員が自由に意見を述べられる場を提供することで、組織は柔軟性を保ちながら成長できるでしょう。
共感ポイントを見つける、そして従業員のエンゲージメントを高め組織を強くしていく。
これこそがインナーブランディングの大きな役割でもあります。
リブランデイングを進めるに当たって従業員アンケートを取り入れてみてはいかがでしょうか。