最近、「動画を特定の画角やサイズに変換してほしい」というような依頼をいただきます。その際に「フレームレートは〇fpsでお願いします」と言った形でメッセージが届くのですが、そもそも「fps」や「フレームレート」って何?という方の場合、そこから調べて撮影や編集作業に取り掛かる必要が出てきそうですよね?
そこで今回は、映像制作をする上で特に重要なキーワード「フレームレート」について解説していきます!
フレームレートってなんですか?
通常、人間の目には映画やアニメの映像は流れるように続いて映っているように見えています。しかし、実際にはカメラは「フレーム」と呼ばれる複数枚の画像を連写して録画しているのです。
こうした「フレーム」は、目にも止まらぬ速さで再生されているため、多くの画像が流れるような映像となって目に映ります。フレームレートとは、1秒間に多くのフレームがどれだけ速く現れるのかを表す数値です。そのため、フレームレートはFPS(frames per secondの略)、1秒間あたりのフレーム数(フレーム毎秒)とも呼ばれています。
フレームレートには1fps、3fps、24fps、25fps、30fps、50fps、60fps、120fpsなどがあり、60fpsは1秒間に60フレーム(60コマ)で映像が記録されますよという意味を表しています。
この中で人が見てスムーズと思うフレームレートは、24〜30fps程度で一般的に人が見える映像は約60fpsまでだと言われています。
また、日本のTV放送は30fps前後のため、日本人は30fps程度の動画であれば違和感を感じることは少ないでしょう。
ゲームの「FPS」とは何が違うのか
「FPS」という表記を見てゲームがよぎった方もいるかもしれませんが、ゲーム用語として使われているそれとは全く意味が異なるというのはご存知ですか?
シューティングゲームなどの一人称視点でプレイするゲームを「First-person Shooter」と言い、これをFPSと呼んでいます。そのため、ゲームをよくプレイされる方だと、フレームレートの方は知らなかったということも結構あります。
ただ、ゲームとフレームレートの意味の方のFPSも一概に無関係とも言えず、「フレーム回避」と呼ばれるプレイテクニックがあったりもします。敵の移動する又は一瞬で判定が消える攻撃に、自分の行動の無敵時間をかぶせる事で、「テクスチャ的には当たってるけどその瞬間はフレーム数的に無敵だからその攻撃は無効」というようなことがゲームの仕様で可能なんです。
フレームレートの歴史
映画撮影が始まった頃、フィルムリールを使用して映像を撮影しカメラの中でフィルムのロールを回して投影する技術を生み出したことで、フレームレートという言葉が生まれました。
現像されたフィルムを撮影に使ったカメラと同じ速度で回すことで、滑らかな映像になったのです。1880年代に映像技術が発展しはじめ、14fpsや26fpsといったフレームレートが使われるようになりました。
実際の動きは一貫して撮影されていなかったため、機械式のクランクが撮影カメラに取り付けられたことで撮影から投影までの安定性が高まりました。
フレームレートのおもな種類と一般的な用途
フレームレートにはいくつか種類があると言いましたが、具体的にどんな使われ方があるか見てみましょう!
種類 | 主な用途 |
3〜5fps | 防犯カメラ・監視カメラ |
15fps | オンライン会議 |
24fps (23.976fps) | 一般的な映画のコマ数 |
25fps | ヨーロッパのTVやDVD (PAL圏) |
30fps (29.97fps) | 日本のTVやDVD (HTSC圏)、ドライブレコーダー、Nintendo Switch |
50fps | ヨーロッパの4K/8K TVやDVD (PAL圏) |
60fps (59.94fps) | 日本の4K/8K TVやDVD (HTSC圏)、PS4 |
120fps (119.88fps) | 一部のスポーツ用カメラや、ゲーム・3D映画、PS5 |
240fps | ゲーミングPC |
それぞれ目的に応じたフレームレート数が設定されており、防犯カメラのような定点で長時間撮影するようなものの場合、ヌルヌルとした躍動感は求められていません。
一方で、コンマ1秒で勝敗が分かれるようなゲームや映像判定に用いられるようなスポーツ用のカメラではカクカクした動画では話にもなりません。目的や用途に応じてフレームレートを設定する必要があるのです。
リフレッシュレートとの違い
フレームレートと混同されやすい言葉に「リフレッシュレート」があります。
リフレッシュレートとは、ディスプレイの画像が1秒間に切り替わる数を言います。
単位は「Hz(ヘルツ)」で表し、たとえば60Hzであれば1秒間に60回画面が切り替わっていることになります。
フレームレートは1秒間に映し出す画像数を指し、ディスプレイに動画・映像を出力する側の指標です。
一方のリフレッシュレートは、ディスプレイなどの動画・映像を表示する側の指標となります。
フレームレートとリフレッシュレートが異なる場合、自動で低い方の数値に合わせられます。たとえば、60Hzのディスプレイは120fpsの動画を表示できるための力はないため、フレームレートが120fpsの動画でも60fpsに変換されて出力されてしまいます。
一般的なディスプレイは60Hzですが、これよりもレートが低くなってしまうと観ている側に不快感を与える可能性があります。ちなみに240ヘルツなどの高いリフレッシュレートの場合、動きの速いゲームに使用されることが多いです。
このように、フレームレートとリフレッシュレートは違う指標ではありますが、相互に関係しあっています。
シャッタースピードとの違い
「シャッタースピード」は何秒間シャッターが開いているかを表すものです。
動画撮影の際、シャッタースピードはフレームレートによって変わります。たとえば1秒をフレームレートの2倍で割った数値にすることで、被写体が自然に感じられるということになるのです。つまり30fpsで動画撮影する際は、シャッタースピードを1/60秒にするのがおすすめだということが分かります。
このように、フレームレートとシャッタースピードの数値は切っても切れない関係と言えます。
フレームレートの注意点
「結局、色々あるけど何に注意して扱えばいいの?」と思われるかもしれません。
ここでは注意点と各fps別の活用法について、説明します!
- 画質や滑らかな動きにしたければ、とにかく数値を大きくすればいいの?
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フレームレートが高いと1秒間に入るコマ数が増えることで、データ容量が大きくなります。データ量が大きくなるとその分負荷がかかり、編集作業やデータの書き出し、アップロードに時間がかかったり、動画データの転送がスムーズに行えないなどの不具合が生じる場合があります。
また、それだけではなく動画再生がスムーズに行われない場合もあります。何より60fpf以上のフレームレートに設定しても、人間の目には30fpsとの違いはほとんどわかりません。よほど速い動きの被写体がなければ、30fpsでも十分と言えます。
- ファイル容量を維持しつつ、数値を高くするとどうなるの?
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同じ容量の中でフレームレートが大きくなると、1コマあたりに使えるデータ容量が少なくなります。そのため、滑らかな映像にしても画質が荒いという結果に陥ることもあります。ファイルの容量に合わせた画質と数値を選択することが大切です。
- YouTubeに上げる動画はどれくらいのfpsがいいの?
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YouTubeにアップロードする場合は、「24〜60fps」の範囲が推奨されていますが、それ以外のフレームレートも使用できるようになっています。一般的な動画であれば24~30fps前後でOKです。
- 高いフレームレートならどんなディスプレイでも綺麗に見えるの?
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高いフレームレートを設定する場合、テレビやパソコンなどの周辺機器が高性能でなければ意味がありません。前述したように、リフレッシュレートは画面のクオリティのことですが、リフレッシュレートが低ければ高いフレームレートを再現できなくなります。パフォーマンスを最大限に楽しみたいなら、それにあった周辺機器を用意しましょう。
まとめ
- フレームレート(fps)とは、1秒間の動画が何枚の画像で構成されているかを示す単位のこと
- 人間の目は一般的に30fps程度の映像を見ていると言われている
- 数値が高いと滑らかな動画、低いとカクカクした動画になる
- フレームレートが高くなるとデータ容量が大きくなり記録領域を圧迫したり、
ネットワーク通信に問題が発生したりする可能性がある
以上、フレームレートの基本を知っておくと、大体のデータ容量や動画の滑らかさがわかるようになります。
フレームレートは高ければ高いほど良いというわけではなく、目的や用途に合わせて設定しましょう。
また、表示するディスプレイなどの周辺機器との兼ね合いも考えながら、動画制作することが大切です!